先日の緩和ケア病棟でのアロマセラピーで、肺がんを患っている患者さまを担当しました。
本日ここへ入院したばかりの70歳代の男性です。
アロマセラピーはきっと初めて、どんな状態なのだろう…
そんな情報を得て、病室へ伺いました。

鼻に管を通していましたが、すごく苦しそうという表情などはなく、穏やかに過ごされていました。
陽射しがほんわか入った暖かいお部屋で、お布団は被らず横向きになられています。
アロマセラピーのマッサージをしに伺ったことを伝え、どんなことをするのか簡単に説明をすると
「うんうん」と頷かれたので一緒に精油を選んでいきました(^-^)

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初めてにも関わらず、男性はとても積極的に香りを嗅ごうと体を起こそうとしてくれます。ひとつひとつ香りを嗅いでは「うんうん」と頷かれたり、顔を歪ませたり。「OK」と手で合図をして下さったり。

何種類か香っていただき、選ばれたのは“ユーカリ”でした!
ユーカリといえば、呼吸器を楽にしてくれる精油で有名です。
ひとは、からだは、欲しい香りを的確に選んでいるんですね!感動の一瞬でした。

アロマセラピーがある程度世間に浸透されてきたこの頃、リラックスにはラベンダー、元気がでるのはオレンジ、むくみには・・・、なんていう成分の効能ばかりにこだわり気にしがちな選び方をしてしまいますが、アロマセラピーなどという言葉はもちろん知らず、精油の名前も薬理的なことも知らず、香りだけを嗅いで選ぶ。このような選び方も、とても大事ではないかなと思います。

男性は辛いところを知らせてくれました。背中と腰。…いろいろと考えてしまいます。
肺のある部分胸の裏側だから?寝たきりの体勢が続いているからなの?とか…

トリートメントを終え、「他のところもしますよ、どこか気になるところはありますか?」とうかがうと、今度はふくらはぎを指差します。トリートメントの間「痛いのかな?だるいですか?」とたずねてみると、だるいとのことでした。足先にはむくみもありましたが、ふくらはぎの部分がどうしても辛そうでした。

両足のトリートメントが終わると「違う方向を向くのでもう一度、腰をしてもらえないか」というようなことを、申し訳なさそうに、声を出し辛そうに合図し知らせてくれました。申し訳なく思わないでもっともっと望んでもいいのに。

少しトリートメントすると、OK!のサイン。「ありがとう」とかすれた声で言われ、
今度は胸を指差されました。苦しいんだろうか…。
そうよね、そうよね、胸が一番して欲しかったんですよね、と思い、ゆっくりトリートメント。
擦るのも大切ですが、そっと、ただただ手を当てていたりもします。これもとても大切なこと。
顔がほぐれ、またOKのサインを出されると「ありがとう」と呟かれました。

あぁぁ・・・、穏やかに過ごされている様子に見えても、体中だるくって辛かったのだな。
と教えて下さったのでした。そして、からだが“必要な香り”と“人の手”を求めているのだな、ということも教えて下さいました。